腸内細菌が脂質から作るものがすごい!

2022年4月17日

先日、日本リポニュートリション協会の
地曳直子さん主催の
京都大学で腸内細菌を専門とする
岸野重信先生のオンラインセミナーに参加しました。

脂質から作る物質の研究ではありますが、
岸野先生は発酵や醸造を専門とする研究室で
乳酸菌を使った代謝を研究されている
最先端の研究者です。

先生の所属する研究室では微生物でモノづくりを
されているそうですが、
これまでの成果がすごいです。

PUFAs・・・この発見により母乳中に含まれる
アラキドン酸を人工乳に加えることができるようになった

Acrylamide・・・接着剤や塗料などに広く使用されている

L-Dopa・・・ドーパミン前駆体、抗パーキンソン薬
その他、Lacchase, Nicotinamideなど一般的にも耳にするようなものがたくさん!

今回はそのような発見して作ったHYAという
脂肪酸代謝物に関してお話しいただきました。

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本題に入る前に先生の他の研究テーマとして、
『漢方薬の効能には個人差がある』
という面白いお話しがありました。

漢方薬はよく、
効く人と効かない人がいるって話がありますよね?

漢方薬は配糖体という形で存在するものが多く、
それはいわゆる作用を発揮するアグリコン
という部分がと結合しています。

作用を発揮するためには
アグリコンから糖が外れる必要があるのですが、
その外す作用をすしてくれるのは
腸内細菌だということなのです。

だから、外す作用を持つ腸内細菌を
持っている人は効く
けど、
もってないと効かないということが起きていたんですね。

ちなみに、アグリコンだけだと不安定で
薬としては使えないんだそうです。

利尿効果などのある漢方薬、
防風通聖散の主成分Baiceline
グルクロン酸と結合して配糖体
として存在しています。

Baicalinは腸内細菌によりグルクロン酸が
切り離されてBaicaleinとなることで
生理活性を発揮します。

このグルクロン酸を切り離すのが
お漬物のすぐき漬けに含まれるラブレ菌
であることを突き止めました。

それで今はラブレ菌を一緒にとることで
誰でも薬理効果を発揮できるようにしているそうです。

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さて、ここからが本題です。

これまで脂質が人など宿主の代謝によって
作り出された機能性物質を
脂質メディエーター(第一、第二、第三世代)として
研究が行われてきましたが、

今回の主役は、人が作り出したものではなく、
人の体内で共生している
腸内細菌が作り出した
脂質メディエーター(第四世代)です。

人が自分で作らなくても(作れなくても)、
腸内細菌が有用なものを作ってくれてた!という話です。

必須脂肪酸の一つであるオメガ6系脂肪酸、
リノール酸は体内でとても複雑な代謝ルートをたどります。

ここですごいなと思うのは、
先生方の研究室ではこの
たくさんの代謝物を同定し、

それを作るための
酵素(CLA-HYやCLA-DHなど)を同定して作り
代謝物を1つ1つ作っていった
ということです。

一体どれだけ多くの人が何年かかってるんだろ、、、
ほんとこういう研究頭が下がります。

リノール酸の代謝物の一つ
HYAにはたくさんの機能があることがわかってきました。

– 抗アルツハイマー病
– 抗ピロリ菌作用
– バリア機能改善作用
– 腸管ホルモン分泌向上作用
– 抗糖尿病作用

バリア機能改善作用とは、
細胞間のタイトジャンクションを
しっかりすることで炎症を抑える働きです。

口腔内だと歯周病を防ぐ作用があるので、
将来的に歯磨き粉などへの応用も考えられているそうです。

またHYAは食後の血中GLP-1濃度を上げ
インスリン分泌を促す作用があることが確かめられました。

その、抗糖尿病効果を期待して、
HYAはサプリが販売されているそうです!

今はこういう腸内細菌の代謝物を摂ることを、
「ポストバイオティクス」と呼ぶそうです。

プロバイオ、プレバイオ、シンバイオ、の次になります!

ここには書ききれない、
岸野先生の興味深い話はまだまだたくさんありました。

今後の先生方の研究成果に期待が高まります♪

最先端の内容をわかりやすく解説してくれた岸野重信先生、
企画してくれた地曳直子さん、ありがとうございました!