腸内細菌が脂質から作るものがすごい!
先日、日本リポニュートリション協会の
地曳直子さん主催の
京都大学で腸内細菌を専門とする
岸野重信先生のオンラインセミナーに参加しました。
脂質から作る物質の研究ではありますが、
岸野先生は発酵や醸造を専門とする研究室で
乳酸菌を使った代謝を研究されている
最先端の研究者です。
先生の所属する研究室では微生物でモノづくりを
されているそうですが、
これまでの成果がすごいです。
・PUFAs・・・この発見により母乳中に含まれる
アラキドン酸を人工乳に加えることができるようになった
・Acrylamide・・・接着剤や塗料などに広く使用されている
・L-Dopa・・・ドーパミン前駆体、抗パーキンソン薬
その他、Lacchase, Nicotinamideなど一般的にも耳にするようなものがたくさん!
今回はそのような発見して作ったHYAという
脂肪酸代謝物に関してお話しいただきました。
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本題に入る前に先生の他の研究テーマとして、
『漢方薬の効能には個人差がある』
という面白いお話しがありました。
漢方薬はよく、
効く人と効かない人がいるって話がありますよね?
漢方薬は配糖体という形で存在するものが多く、
それはいわゆる作用を発揮するアグリコン
という部分が糖と結合しています。
作用を発揮するためには
アグリコンから糖が外れる必要があるのですが、
その外す作用をすしてくれるのは
腸内細菌だということなのです。
だから、外す作用を持つ腸内細菌を
持っている人は効くけど、
もってないと効かないということが起きていたんですね。
ちなみに、アグリコンだけだと不安定で
薬としては使えないんだそうです。
利尿効果などのある漢方薬、
防風通聖散の主成分Baicelineは
グルクロン酸と結合して配糖体
として存在しています。
Baicalinは腸内細菌によりグルクロン酸が
切り離されてBaicaleinとなることで
生理活性を発揮します。
このグルクロン酸を切り離すのが
お漬物のすぐき漬けに含まれるラブレ菌
であることを突き止めました。
それで今はラブレ菌を一緒にとることで
誰でも薬理効果を発揮できるようにしているそうです。
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さて、ここからが本題です。
これまで脂質が人など宿主の代謝によって
作り出された機能性物質を
脂質メディエーター(第一、第二、第三世代)として
研究が行われてきましたが、
今回の主役は、人が作り出したものではなく、
人の体内で共生している
腸内細菌が作り出した
脂質メディエーター(第四世代)です。
人が自分で作らなくても(作れなくても)、
腸内細菌が有用なものを作ってくれてた!という話です。
必須脂肪酸の一つであるオメガ6系脂肪酸、
リノール酸は体内でとても複雑な代謝ルートをたどります。
ここですごいなと思うのは、
先生方の研究室ではこの
たくさんの代謝物を同定し、
それを作るための
酵素(CLA-HYやCLA-DHなど)を同定して作り、
代謝物を1つ1つ作っていった
ということです。
一体どれだけ多くの人が何年かかってるんだろ、、、
ほんとこういう研究頭が下がります。
リノール酸の代謝物の一つ
HYAにはたくさんの機能があることがわかってきました。
– 抗アルツハイマー病
– 抗ピロリ菌作用
– バリア機能改善作用
– 腸管ホルモン分泌向上作用
– 抗糖尿病作用
バリア機能改善作用とは、
細胞間のタイトジャンクションを
しっかりすることで炎症を抑える働きです。
口腔内だと歯周病を防ぐ作用があるので、
将来的に歯磨き粉などへの応用も考えられているそうです。
またHYAは食後の血中GLP-1濃度を上げ、
インスリン分泌を促す作用があることが確かめられました。
その、抗糖尿病効果を期待して、
HYAはサプリが販売されているそうです!
今はこういう腸内細菌の代謝物を摂ることを、
「ポストバイオティクス」と呼ぶそうです。
プロバイオ、プレバイオ、シンバイオ、の次になります!
ここには書ききれない、
岸野先生の興味深い話はまだまだたくさんありました。
今後の先生方の研究成果に期待が高まります♪
最先端の内容をわかりやすく解説してくれた岸野重信先生、
企画してくれた地曳直子さん、ありがとうございました!